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引用メモ 日本美術の粋を加味せる実用向工芸品を

この頃になって関心を持ったことは
曾祖父、松村景春が80年も前に書いていたことだった。

(起源、ルーツ、新しさでなく普遍的な)

日本発の工業デザインを

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新聞記事文庫 博覧会及商品陳列所(5-037)
大阪毎日新聞 1926.12.23(昭和1)
対米工芸品輸出に就て

大阪府工芸協会理事 松村景春


 博覧会の出品は展覧会や競技会のそれとは趣きを異にするもので営業広告の機関として出品者自身の目的を達成する事に努力しなければならぬ。
 最近米国費府において開催された万国博覧会に就て見るも日本の出品は全然博物館陳列式で欧米各国の出品が見本市場として立派に目的を達していたのに較べると雲泥の差であった。

 第一出品その物が新らし味に乏しく万国に紹介すべき性質を帯びない物が多かった。陳列の方法なども欧米の出品者は広大なる出品場所を占有し、その周囲に小高き陳列台を設け出品が極めて明瞭なのとその中央に長椅子などを置いて休憩の便をはかり、両三名の店員が親切に説明を試みたのなどは誠に気の利いた方法であった。この結果は当然出品の目的たる広告宣伝並に商取引の開始に有効であった事は確実である。

 日本出品の多くはどれもこれと反対の方法が試みられ番人的の看視がだまって立っているに過ぎなかった。だから政府が折角我国産の海外発展に資すべく巨額の費用を投じながら遂に所期の目的を達する事が出来なかった訳である。

 万国博覧会のこの成績を以て対米輸出を絶対に悲観する事も早計である。私はこの博覧会のをはると同時に北米各地を調査した結果米国において我国産品の売ざる理由、これを改良すべき点等を知り、かくすれば前途有望なるべしとの成案を得たのである。

 要するに今後最も有望なるものは実用化せる工芸品である。現在における我国の商品は米国国内で勢力頗る貧弱であるが、この間数十年来輸出せられている貿易雑貨と称する日本工芸品が今なお多少の命脈を保っている。これに対しドイツ及び他の欧洲において製造される工芸的実用品乃至玩具の如き何れも日本意匠図案を応用して非常に勢力を揮っているのを見ると、日本商品も本来の特質を発揮すれば十分にこれ等の模倣品を駆逐して覇を唱えることが出来ると信ずるのである。

 元来米人には美術的大分が少いけれども美術を愛好するの念は強いからこの点に着目してその嗜好に投ずるの工夫を講じなければならぬ。只注意すべきは従来試みられた技巧優秀の骨董的作品は特殊上流階級に需要を喚ぶに留るから販路の狭小なるの故を以て米国商人は取扱うことを嫌っている。ゆえに成るべく中産階級以下に需要せらるる商品を輸出する事に力を注がねばならぬ。即ち日本美術の粋を加味せる実用向工芸品を輸出するのが得策である。この点に力を入れて対米発展を試みたならば従来の面目を一新して本邦商品の勢力は米国を風靡するに至ること決して至難の業ではない。特に一考を煩わしたいゆえんである。

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大切なのは、どう実現していくか
by kuniakimat | 2008-03-31 07:30 | ★★★
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